DRUG TREATMENT DAYZ*

ゆうすけ119MHz

2008年11月18日 02:02

それまで世話になった病衣を脱ぎ捨てる。

1週間ほど洗っていないそれは、

世間一般の考えから見ればこの上なく汚いはずだ。

ただ、俺にとってそんなことはどうでもよかった。

40日もシャワーや風呂に入れなかった状態が、

感覚を麻痺させているのか、それとも元から気にしない質だったのか、

それさえわからない。

シャツにジーンズ、秋を本格的に迎えるには少々寒そうな格好に着替え、

俺は暖かい病室から冬の準備をはじめる外の景色を眺める。







夏休みも終わる、そんな思いを胸にひたすら思い出作りにかけずりまわっていた

高校2年生だった。

寝ながら運転しているとトラックに後ろからぶつかった。

睡眠不足、速度超過、前方不注意……原因はそんなとこだろうか?

追突した瞬間、鋭い痛みが俺を襲った。

意識が一気に覚醒した。

殴られるというよりか、刺される感覚に近い記憶がある。

運転手が出て来て、「大丈夫ですか?」と声を掛けてきた。

当の俺はナニカがみぞおちに入ってしまい、うまく呼吸ができず、

十数秒が立ってようやく「大丈夫です。」と呻きながらゆっくり起き上がった。



【2分後】

横転したバイクを、起こす気にはなれなかった。

顔に神経を向けると、顎から少し下、

日常生活では人から見られないようなところに違和感を覚えた。

触ると血が出ていたが、痛みはなかった。

目の前のコンビニに入り、

店員に「トイレ借りていいスか?」とだけ言って、

どこかおかしい腹を引きずりトイレに入る。

幸い顎の下の出血はひどいというわけではないし、

鏡を見たところ、他に外傷もない。

どうやら大した事故にはならなかったようだ。



【5分後】

コンビニを出て、改めて現場を見る。

乗っていたバイクは大破していて

(実際その後それが動くことはなかった)、

ヘルメットが無造作に転がっていた。

トラックの方はほぼ無傷らしく、運転手の方にも異常はないようだ。

そんな確認をしているとすぐにサイレンが近付いて来た。



【7分後】

警官に質問されてすぐに、無免だということを告げた。

すぐに現場検証ということになった。

ひどく喉が渇いていて、いくら水を飲んでも渇きはとれない。

緊張?いや、そんなことはない。

当時鉄面皮と言われるほど無神経だった俺に、そんな言葉は似合わない。

違和感が俺の身体を支配し始めていた。



【1時間後】

現場検証が終わると警察署へ連れて行かれて、簡単な調書をとった。

正直にすべて話したつもりではあったが、

何を言ったかまでは覚えていない。



【1時間20分後】

親に引き取られ、家で一通り愚痴られた後、

残りは明日からということになった。

ここらへんがいい加減になっているのは理由がある。

一つは当時俺はあまり反省をする人間ではなかったこと、

もう一つは痛みがひどくて立っているのがやっとの状態だったからだ。

この間、腹の痛みはどんどん大きくなっていたが、

大丈夫、根拠のない自信がそこにあった。


【2時間30分後】

ベッドに入るがなかなか寝ることができなかった。

興奮しているせいだろうと思うが、

腹の痛みはどんどんひどくなっていく。

気持ち悪くなって胃の中のものをすべてぶちまけた。

いつもはきつい胃液もなんともない。

腹が痛い。

痛い。



【3時間後】

母親に頼んで病院に連れて行ってもらうことに。

車体が揺れる度に痛みが響く。

一人の看護師さんが緊急玄関で待っていた。

車椅子に乗る事を勧められ、お言葉に甘える事にした。



【3時間20分後】

処置室に到着すると医者が座っていた。

支えられながらベッドに移ると、先生はあれこれ身体を触ってくる。

どうやら腹の中心よりやや右が痛むようだったが、

俺にとって痛い事に代わりはなかった。

そんなことより、痛いのを治して欲しい、

などとひどく勝手な考えを頭がよぎっていた。

CTを撮るため、ベッドは移動することになる。

揺れる度に呻いた。

CTを痛みに耐えつつこなしていくと注射を打たれた。

痛みが少し和らぎ、俺の意識はすぐに闇の奥深くへと落ちていった。